京都を感じる小空間へタイムスリップ
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京都を感じる小空間へタイムスリップ
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スペースと設備
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宿の風景をのぞいてみよう
車は小さな橋を渡った。川はさらさらと流れ、田園は折り重なる山々を映し出している。簡素なテラスハウスの一画に、昔の京都を思わせる空間が現れた。青々とした竹、薄灰色の玉砂利と藍色の暖簾……。ゆっくりと流れる時間の跡を追うように、遅すぎず早すぎず影は静かに傾いてゆく。民宿「小時光」へいざなうように……。
京都風の午後三時十五分
暖簾くぐってを下駄箱に靴を入れる。扉を押し開けると、目に飛び込んできたのはたくさんの本と日本酒、小物が並べられた壁いっぱいの本棚だった。ほのかに光る集魚灯は、木の風合い豊かな長テーブルを照らしている。午後の陽射しが窓際の畳をそっとなでる。スピーカーからはnaomi & goroの「Bossa Nova Songbook1」。アンニュイなメロディーが流れていた。フローリングの床に足を踏み入れると、かすかに、けれど軽やかにゆっくりと時が流れ出した。
オーナーのジョルジョ(焦焦)さんの笑顔はまるで薪がくべられた暖炉のようだ。実直で温かくて、そして大きな海のようでもある。彼女はオープンキッチンで果汁を絞りながら、旅での発見を尋ねてきた。それから宜蘭の生活について話してくれた。カウンターにもたれかかって冷えたリンゴパインジュースをひと口すする。一気に暑さが和らいだ。
キッチンの上にはロフトが隠されていた。ここは書斎だ。本棚からお気に入りの1冊を持ち込もう。椅子の上に丸まって、オレンジ色の光の中で文字と行間を追いかければ、誰にも邪魔されることはない。
耳を澄ますと、遠くから聞こえてくる太鼓の音
「「ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきたのだ。」(村上春樹『遠い太鼓』講談社、1990年、p.16)2階の客室、「太鼓声2~4人房」の引き戸を開く。畳の上にちゃぶ台と木綿の座布団があった。敷布団にヘッドボードの花柄の和生地、腰掛け脇の化粧台は、見るからに和の雰囲気で満たされていた。浴室にあるむき出しのコンクリート壁は、三人の熟練工によるものだ。かわいらしいバルコニーに小さな鉢植え。あらゆる場所にオーナーの心配りが見て取れた。
「ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、その太鼓の音は響いてきた。とても微かに。」(村上春樹『遠い太鼓』講談社、1990年、p.16)「遠方2人房」は3階にある。半開きのカーテン越しに陽射しが差し込み、部屋の空気を温めている。木と本からもほのかに香りが立つ。バルコニーから遠く山の稜線と田園と眺めた。前を流れる渓流は、佐賀のおばあの家で見た風景と重なる。耳を澄ますと、涼やかな清流の音が幸せを運んでくれる。
オーナーのジョルジョさんとカルロ(卡羅)さんは、村上春樹の文学を愛してやまない。特に好きなのが「遠い太鼓」。それは彼女たちのニックネームと部屋名から窺い知ることができた。オープン当初、2人にはそれぞれ個室があった。2階の「焦焦2人房」と3階の「 卡羅2人房」だ。しかし旅行者のリクエストに応えて、畳を敷いて2人用の布団とちゃぶ台を置いて客室にした。郷愁を抱かせる小さな空間は、あなたを優しく包み込んでくれるだろう。
昔ながらの米食の慈味
朝になると、鉄鍋いっぱいに盛られていたのは、宜蘭名物「張秀雄米苔目」のスープビーフンだった。オフホワイトに黒いラインが惹かれた器には、地元のおすすめ小皿料理が並べられていた。彩り鮮やかな新鮮な果物が、室内に置かれたアンティークの棚や鉄瓶によく映えている。ビーフンをひと口頬張る。タレは必要ない。ダシの効いたさっぱりとしたスープが、身体の奥底に眠る魂と懐かしい記憶を目覚めさせてくれた。
「そしてその音を聞いているうちに、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ。」(村上春樹『遠い太鼓』講談社、1990年、p.16) 観音開きのガラス戸を開けて、門前の縁側に座る。足をぶらぶらさせて、よく冷えたビールをひと口。夏の夜風に吹かれながらまたひと口。「小時光」に流れるゆっくりとした時間を感じながら、ひと口、またひと口と味わうのだ。