レトロなインダストリアル風インテリア、優雅で個性的な空間
重厚な扉を開くと、驚きの光景が飛び込んできた。そこはイギリスのロックテイス トでもあり、ニューヨークのブロードウェイスタイルでもある。吹き抜けのロフト に、木目が温かいフローリングが敷かれたリビング。床はとがった台形の形をして いる。黒い鉄骨の柱とヒノキの枕木、むき出しの鉄管配線、広々とした空間だ。3人 がけのビンテージソファの前には牛革絨毯が敷かれていて、その上には宝箱が置か れている。天井からは温かい光を生み出す電球がぶら下がっており、壁には数枚の 抽象画が掛かっている。荒っぽい表情を残しつつ、センスを感じさせるおしゃれな インダストリアル風インテリアだ。
ステージにつながっているかのように思わせる階段を登っていくと、大きなダブル ベッドが二つ並んでいる。夜を徹しておしゃべりするにはもってこいだ。そして階 段の横に敷き詰められたレンガの壁こそがオーナーの一番のお気に入りであり、玦 品の魂でもある。その壁でスポットライトに照らされている田んぼとあぜ道の写真 。これは民宿を営む兄弟の家融さんと力綸さんのお父様が撮影した伯朗大道だ。油 絵のようにも見えるその写真に写っている自転車であぜ道を通る人々と田んぼ。そ れは彼らの家へと続く帰り道だ。
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故郷に生み出した夢のような場所
長い間新竹で働く家融さんは、新しい命に素晴らしい成長環境を用意しようと、最 愛の妻と息子を自らが幼少期を過ごした故郷の宜蘭に託した。祖父母の愛情とこの 宜蘭が育む大自然の下で、息子が強く優しく育ってくれることを願っている。だか ら、新竹と宜蘭を4時間かけて毎週2往復することを、家融さんが苦に思ったことは 一度もない。
この玦品は元々、家融さんのお父さんが店舗として貸し出していたトタンのボロ屋 だった。借主が出ていき、今度は倉庫を作ってまた貸し出そうとお父さんが考えて いた時、家融さんと弟の力綸さんは思いついたそうだ。「それなら俺らで民宿をや ってみよう!」この一言で、何の経験もなかった兄弟は動き出すことになる。すで に半分できあがっていた倉庫。その鉄骨や壁をベースに、長年培ってきたセンスで 内装を仕上げた。当時銀行で働いていた力綸さんは、現場監督と設計を任された。 膨大な資料を集め、展示会を参観するためミラノにまで飛んだ。それもこれも、宜 蘭に今までにないモダンテイストの民宿を創るために他ならなかった。
全力疾走し続けること半年、兄弟が描いた理想は遂に実現することになる。最初は 反対していた両親も終盤は二人を応援し、一緒になって奔走してくれた。家融さん は自らの息子の名前である「玦」の一文字を民宿の名前に当てた。これは息子への プレゼントであり、そしてこの素晴らしい空間こそが、彼ら家族が一丸となって故 郷の地に生み出した、新たな命ということの表れでもある。
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あなたたちだけのお洒落な空間
夜、羅東夜市からたくさんのごちそうを持ち帰り、ここで酒を飲み交わしながら、 映画を見て、休暇を楽しむ。朝になったら、日の光がその優雅さを温かく照らす。 その光の中にぼんやり浮かぶステージにはまるで昨晩の温度が残っているかのよう だ。夜通し聞いていたパロヴ・ステラーの名曲〈Booty Swing〉が、耳の奥でまだ鳴 り響いている──「玦品」、ここはあなたたちだけの空間だ。お洒落で優雅なひと 時を届ける場所。休暇はまだ終わらない。だけど、なぜだろう。もうすでに余韻に 浸り始めている。