救急医から旅好きに
小さいころ、病床に伏す祖母の姿を見て放った「将来お医者さんになる!」の一言 がEasonさんの未来の予言だった。そして高校時代に見たアメリカドラマ「ER緊急救 命室」に感銘を受け、誰かの役に立ちたいという気持ちから、医者になることを人 生の目標に掲げたEasonさんは、見事医学部に進学。なぜ救急科を選んだのかとたず ねると「救急科なら、いかに早く患者を治すことができるかが学べるし、もしかし たらその患者の運命を変えることだってできるかもしれない!」と真面目な顔で答 えてくれた。自分の性格を理解し、医療の第一線に立つことを選んだのだ。急患搬 入の混乱の最中でも落ち着きを忘れず、治療の1分1秒に全力を注ぐ。「胸に痛みを 訴える30人の患者の中から、いかに素早く最も命に危険のある患者さんを見つけら れるかが、救急医には求められるんだ。」救急医という職業で培った感性が、Eason さんに突然の困難にも冷静に対応できる力を身に付けさせ、物事の奥に眠る真意に 一早く気付き、最高の答えを導き出す能力を授けたのだ。
両親ともに国語の先生だというEasonさん。小学校から英才教育を受け、母親の希望 で小学校の美術クラスにも入ったことがあり、美術に対する知識が多少なりとも身 に付いたそう。「教師の子供ってこともあって、その時期はある意味病的だったの かもしれないね。」彼は笑いながら話す。小さいころから勉学によるストレスがた まっていたため、家を出て大学に入ったタイミングで反抗期がきたのだとか。大学 では、今までできなかった遊びや体験できなかったことを試してみるようになった 。医学シンポジウムでメキシコに行ったときには、予約していたツアーが急にキャ ンセルに。そこで、Easonさんはなんと同級生たちと自分たちで旅に出たという。そ の際、家財道具と鶏を一羽抱えた現地民が同じ長距離バスに乗っているのを目にし た。そんな予測不能なできごとを通じて、旅の楽しみを初めて体感したEasonさん。 旅に魅了され、世界各国を巡るようになったのだそうだ。

「人」が第一、細部まで完璧にこだわる
「海外で素敵な空間をたくさん目にしたら、自分も海外から台湾に遊びに来た人た ちに、そんな場所を提供したいって思ったんだ。」各国で異なる文化を持つ宿に泊 まるうちに、台湾で民宿をやりたいという夢がEasonさんの心に芽生えた。それから 一歩一歩、その夢に近づくための努力を重ねた。宿泊業界について詳しく調べたり 、自ら実地に赴いて、近くを散策したりもした。そして、燦燦と輝く太陽がまぶし いこの高雄の地を選び、理想の物件を見つけたのだ。駅から5分、築40年の古い建物 だ。Easonさんの夢は、こうした努力の積み重ねによって創り出された。
Easonさんの旅の経験は、宿の設計にも活かされた。高雄の町並みを描いた壁画は、 自身の小学校の同級生で、鳥瞰図界の重鎮でもある張棣禎氏に依頼し描いてもらっ たものだ。一筆一筆繊細に、丁寧に高雄の日常をそのスペースに埋め込み、旅人た ちをその生活の中に引き込んでいく。自らの理想を形にするべく、Easonさん自身が 現場で指揮を執り、清掃なども行った。だが、困難は次から次へと襲い掛かって来 た。高雄が強烈な台風に見舞われた際には、施工が完了していなかった排水口に大 量の雨水が流れ込み、5階から2階まで水浸しになってしまった。Easonさんは友達と 急いでモップで水を掻きだしたが、水垢がどうしても取れなかった。そのため、す でにきれいに貼られていたフローリングの床を全て取り外し、付け替えたのだ。「 自分の家みたいものなんだ。細かい所まで理解していれば、この家をどう守ってい けばいいかがわかる。」細部までとことんこだわるEasonさん。ベッドも自ら選んだ ほどだ。彼は旅人の目線から物事を考え、最高の空間を作り出した。

泊まるだけじゃなく、異なる生活スタイルへの扉を
Easonさんは言う。今後はIn Style Houseを宿泊施設としてだけでなく、異なる生活 スタイルを開くもう一つの扉としても機能させたいと。ここでは不定期に展覧会や 交流会などを行っている。Easonさんは、セレクトショップをここに開こうと計画し ているという。海外の旅人たちに創意豊かな台湾の商品を思い出と共に持って帰っ て欲しいからだそうだ。そして、台湾国内の旅人にも、このショップを通じて、異 なる生活スタイルを開拓していって欲しいと考える。
「ここは高雄の日常を一番近く感じられる場所。だからここをスタート地点に、旅 人たちにはもっと高雄の生活を感じて欲しい」落ち着いた口調の裏には、たゆまぬ 努力がある。Easonさんの感性と素養、そこかしこに見られる繊細さ、そして自らの 旅の経験、それらを旅人たちへの真心に変えて創り出されたIn Style House。さぁ 、ここから出発だ。Easonさんと共に、高雄の生活模様をその肌で感じよう!