緩慢・海桐小屋

海風が喧騒を運び去る

石梯坪の風景区に入ると、エメラルドグリーンの海が目に飛び込み、ひんやりとした海風が海からの挨拶を運んでくるスタッフが海岸線のそばにある宿へと親切に案内し、チェックインの儀式について説明する。目の前のテーブルには木のトレーが運ばれてきて、好きな香りとルームキーを選ぶよう言われる。旅の仲間たちとワイワイと今回の旅にぴったりの香りを選ぶ。部屋に入る前から、その香りの余韻がすでに旅の疲れを癒してくれる。

本館に別れを告げ、風景区へ出ると、遠くに一本の石畳の小道が見えてくる。離れは「海桐（海岸に咲く小さな白い花）」と名づけられているように、小道の行き止まりにちょこんと佇んでいる。石梯坪のガヤガヤとした人混みから離れ、山あいの静けさに包まれる「緩慢・海桐小屋」。一角を占めるバナナ畑の木にもたれかかると、自然の景色を楽しめるちょうどいい自分専用のスペースができ、遠くに見えるにぎやかな休日の雰囲気と広い景色をのんびり楽しむことができる。

小さな小屋の主になった気分で過ごす休日

中に入ると、目に入るのはフローリングの廊下だ。壁一面のガラス窓からは様々な緑色が入り交じるボタンウキクサの庭の景色が楽しめる。陽の光がガラス窓を通って、ぽとり、ぽとりと部屋の前に踊るように降り注ぎ、裸足の足を照らす。回り廊下の突き当たりまで行くと、そこは窓の向こうにバナナ畑が見えるリビングだ。

荷物を置き、リラックスできる音楽をかけたら、ダイニングテーブルの横の本棚から本を一冊選ぶ。広いリビングでゆったりと横になったり、部屋に戻って窓のそばのソファで本を読みながら、時々顔を上げては窓の外を眺めて、くっきり見える山並みと海岸線を目に焼き付ける。夜はシャワーを浴び、その残り香を纏いながら過ごすしんと静かな夜。ふっと力を抜き、ベッドのあたたかい温もりに体をあずけよう。

暮らしの美しさと味わいを噛みしめる

山の麓から朝日が立ち込める早朝の時間。昇ってくる太陽とともにゆっくりと本館へ向かい、石梯坪の地物を使った中華式の海鮮料理の朝食をいただく。盛りだくさんの朝食を食べた後は、贅沢な食後のお茶の時間や創作料理（予約制）も楽しめる。ここで味わう一つ一つのご馳走は、どれも地元の食材を使った心のこもった料理ばかり。すぐそばに見える海の景色とともに、暮らしの美しさと味わい深さをゆっくりと心で感じる。

花蓮の美しさを堪能し、月が昇る頃に夕食を終えると、満天の星空をいっぱいに浴びながら海桐小屋へと戻る。ソファに横たわって音楽を聴いたり、本を読んだりしながらのんびりと過ごす夜。早朝、朝の淡い光と霧が立ち込める中、朝日を目当てに半面山を登ります。近付いては遠ざかる波の音は、まるで自分をはるか遠くの場所へと連れていってくれるかのよう。目と鼻の先に見える山稜にぴったりと貼りつくような青い空を見て、心もだんだんと明るくなっていき、山の上での一秒一秒を噛みしめるように味わう。降り注ぐ日の光が、暮らしの足跡を照らし、心の奥深くに光を落とすと、ふっと笑顔がこぼれ、そんな理想の週末の幸せを心から感じる。