自由を求め、羽ばたく心
Graceさんの心には、目の前の壁を突破したいという強い気持ちがある。それは自由への憧れからくるものだ。大学を卒業した彼女は、身も心も都会にすっかり汚染され、そんな環境から逃げ出したい一心で、小さなバッグだけを抱えて高雄から花蓮へとやって来た。そしてこの一歩が、7年にも渡る何にも縛られない自由な生活の始まりとなる。大胆にも一人で飛び出して、怖くなかったかと尋ねると、Graceさんは目の奥に光を宿し、これは一時の衝動ではなく、ずっと持ち続けてきた信念の上で決めたことなのだと話す。「私は本当に自由を愛していて、やりたいことがあるとすぐに実行に移してしまうんです。」
旦那さんとの馴れ初めを聞くと、Graceさんは笑いながら、もしかすると意思が強くて頑固な性格ゆえに、恋愛をする時も自分らしさを貫いてしまうのかも知れないと話す。というのも、今の旦那さんと付き合うことを了承した時でさえ、相手の身分を確認するために、毅然とした態度で身分証を要求したのだとか!花蓮で出会った2人は、縁があり交際を始めて半年後に結婚。2人揃って自由を愛する性格だったために、結婚後の波乱は避けられなかったが、お互いに少しずつ、穏やかで波の立たない程よいバランスを探し始めている。「結婚はお互いに心地良いと思える関係を築いていく一つの過程。まず自分がどんな生活をしていきたいかをしっかり理解してから、その生活を目指して毎日を過ごしていくことが大切だと思う。」必要なのは燃えるような愛と別れではない。ゆっくりと時間をかけて関係を築いていった信じ合えるパートナーがいることこそが幸せなんです、とGraceさんは語る。
墾丁で築く愛の夢、家という帰る場所
縁があり、この古い家と出会うことになる。広いエメラルドブルーの海岸からもそう遠くなく、大通りのような喧騒が押し寄せることもない。そうしたことが決め手となって、2人はこの場所に一軒の白い家を作り、憧れの生活を送ろうと決めた。Graceさんは笑いながら、夫は元々軍の仕事に携わっていたのだけれど、亭主関白ではなく、家事は自分よりもきちんとこなすのだと話す。彼は木の家具を手作りするだけでなく、料理に打ち込んだりと、誰よりも真面目な性格なのだとか。仕事の関係で、家族とは別の場所で暮らしているけれど、皆でこの場所に作り上げた家は、この先も変わらず幸せに満ちた、帰るべき場所だ。
離れて暮らす子どものことに触れると、Graceさんの顔はふわりとほころぶ。頬をゆるめる幸せそうな様子は、母の愛に溢れている。「本当に母になって初めて、今までの自分がどれだけ反抗的だったかに気付いたんです。」彼女は、子どもを育てることは常に自分自身が反省することでもあるのだと言う。子どもの生活習慣や礼儀をしっかりと正しながらも、彼ら自身が選択を迫られた時や自分自身に向き合おうとしている時には、決してその道を妨げることはない。子どものことについて話す彼女の一言一言から、深く伝わってきたことがある。それは、Graceさんが愛という土台と安心感を子どもに与えることで、自由に憧れた自分のように、子どもにも自分だけの自由の空を見つけ、その場所で飛び立つことを願っているということだ。
「那年夏天」での暮らし、陽の光が降り注ぐ海岸で得た自由
「私たちは暮らしと人生の目標を合わせる方法をゆっくり学んでいかなくてはならないんです。人生という道はお互いに見つめ合うものではなくて、同じ方向を向きながら遠くを目指していくものだから。」Graceさんは、いつか彼女は子どもを連れて高雄の学校へ通うかも知れないし、定年退職した夫は墾丁に戻って、好きな料理を作りながら充実した暮らしを送るかも知れないと話す。人生の中では、数え切れないほどの選択肢に向き合わなくてはならない。けれど彼女の目には、はっきりと自分の進むべき未来への道が見えている。この先どこに行ったとしても、「那年夏天」で描くゆったりとした生活、そして陽の当たる海岸が導く自由への空がそこにはある。
Graceさんは、志を持って家を飛び出したあの日から真実の愛に出会うまで、東から南へ、青い海を飛び越えて予想だにしない人生を送ってきた。その最後に、夫とともに海のささやく声を聞き、常夏の中、太陽がきらめく佳楽水で理想の生活を築いている。彼女はこの柔らかな純白の家で、キラキラと暖かな愛の光を灯し、帰るべき場所を守っていく。