米修B&B

のどかな田舎で出会った木々

背の低い木製の門扉を押し開けて中に入る。庭には花や草木が生い茂っていて、元気に飛び回る赤 トンボと一緒に地面に敷かれた砂利道を歩く。建物の入り口には、しっかり作られた木の下駄箱が 置かれていた。小さな黒板には色とりどりのチョークで「米修B&B、宿、木工、生活を楽しもう」 と書かれている。中に入ると、カラフルな木製の家具があちこちに並べられている。部屋の中はま るで小さな森のよう。顔を上げると、大きなガラス窓には青い空と豊かな緑が映っており、童話の 中に出てくる妖精の家を思い出した。

この可愛らしいおうちは、オーナーが心を込めて作った作品だ。玄関先にある犬小屋は米修さんの 初めての木工作品。ペットのBogiのために作った温かい家だ。それ以来、米修さんはカッコいい女 大工さながらに木工作品を作り続けている。そして、同じくDIY好きの阿鉄さんは米修さんの第一 助手。阿鉄さんが木工を好きになったきっかけは、自身の何でも触りたがるクセ。以前はなんと認 証機関であるSGSの仕事もしたことがあるというから驚きだ。彼らは家の屋上に小さな工房を作り 、自らの手で理想通りの家を作り上げた。

温度がある手作り工房、3つの異なる色の小さな童話

上の階の3つの客室はそれぞれ異なる大自然の色である赤、青、緑をテーマにしている。1つ1つの 部屋はまるで小さな童話のようだ。1ページ目はヒマワリが赤い花園で育った物語。客室「瑞徳温 房」は旅人とペットのために準備された小さなパラダイスだ。カラフルな枕にパステルカラーで塗 られた壁紙。眠りにつくまで、愉快な気持ちでいさせてくれる。

2ページ目は妖精たちが森の中で繰り広げる冒険ファンタジーだ。客室「格林森房」は唯一の4人部 屋。友達と一緒に休暇を過ごす秘密基地のよう。天井につながる壁には風船の束を手にした恐竜が ぷかぷか空に浮かぶイラストが描かれている。恐竜のお腹には時刻を示す針が。カチカチと時を刻 む音はまるで楽しい冒険がもうすでに目の前に迫っていることを知らせてくれているかのようだ。

3階に上がると、3ページ目の物語が始まる。人魚姫の海の底での物語だ。「布魯水瀾房」は小上が りのフローリングに波模様のヘッドボードが付けられている。唯一の浴槽付きの部屋で、淡いピン クの塗装がされている。まさに人魚姫からのロマンチックなプレゼントだ。

生活と童話が共存する家

朝はベランダに出て深呼吸。宜蘭の新鮮な空気を吸い込んだら、朝食のいい香りも漂ってきた。豆 乳に新鮮なフルーツサラダ、マッシュポテトにゆで卵、そして程よく焼けたパン。シンプルであり ながら栄養バランスは抜群だ。米修さんと阿鉄さんの木工教室に参加することもできる。宜蘭でぜ ひトンカチをコンコンと動かす楽しさを味わってほしい。一般的な教えるだけの体験教室とは違っ て、旅人と共に作品を生み出すことを楽しむ米修さん。そんな工房を阿鉄さんは「分娩室」とユー モアたっぷりに呼ぶ。自分の手を動かして作品を作り上げる満足感を味わえるはずだ。

部屋の中には、米修さんと阿鉄さんの仲睦まじい様子を象徴するような温かさが漂う。自由でいて 温もりがあるのだ。出会ったとき、一人はちょうど仕事に一区切りがつき、もう片方は失恋をきっ かけに登山好きになった頃だった。そんなこんなで一緒に山登りに行ったり、釣りをしたり、サイ クリングをしたり…台湾百岳も2人で約半分を制覇した。息の合ったもの同士、愛で民宿を営んで いる。田舎での生活。二人三脚でいろんなことを乗り越えた。阿鉄さんが病気を患った際にも、前 向きな気持ちで病と闘った。この童話のような家の魅力は、空間そのものではなく、オーナーの2 人から溢れているものなのだろう。