シナモンの木が見守る温かな家
ぬくもりあふれる木のドアを押し開けると、温かな空間が迎えてくれた。手製の木枠の窓の隣には小上がりの板の間が。奥へ進むと、大人数で集えるダイニングや設備の整ったキッチンばかりか、緑に囲まれた裏庭まであった。1 棟全てが自分たちの空間となり、旅人はみな穏やかな雰囲気に包まれる。ゆったりとしたここで歩みも憩いもより軽やかに、自由気ままに過ごしたい。
仲間と共に大きな窓のそばに集まって、クッションを抱え、互いの物語に聞き入り、クッキーをほおばりながら笑いをこらえる。のんびりとしていた楽しい時間は、まるで魔法にかかったみたいにあっという間に過ぎていく。夕方、立ち込める湯気と香りに包まれて、わいわいと火鍋を囲む。ソーダの瓶からあふれ出した泡はまるで青春の1ページ。爽やかに弾けて闇に流れ出す。
裏庭に出て、窓の向こうの笑顔を見つめる。傍らのシナモンの木は変わらず静かに、この温かな家を見守っていた。オレンジの暖色の光の中に、この旅最高の笑顔が浮かび上がる。
寝室は2部屋、我が家のようにリラックス
夜が深まったら、柔らかなトルコブルーの壁づたいに2階の寝室へ。あるのはシンプルで温かい雰囲気の2人部屋と4人部屋が1つずつ、気心の知れた仲間と我が家のようにくつろぐのに最適だ。
古民家の面影が残された屋上は、まるで純粋だったあの頃がここに留まっているかのようだ。4人部屋の小上がりに置かれたベッドに寝ころんだら、目を閉じずにはいられない。永遠に続く終わらない会話…誰が最後の言葉をつぶやいたのか。わからぬまま深い眠りに落ちる。互いに寄り添う美しい夢が闇夜とともに消えてしまわないことを祈りながら。大きな窓とシナモンの木がお供する2人部屋は、平穏な静けさで満たされていた。皮革のソファーに腰かけて眠りにつく前に1冊の本を開く。心地よいバスルームで旅の疲れを洗い流したら、ほっとする木の香りに包まれて、夢の中へ…。
太陽に抱かれた静かな小天地
おはよう。身を乗り出して窓の外を眺める。光と影、鳥の鳴き声が部屋の中に入り込み、友人の体の上でいたずらっぽくリズムを刻む。となりの部屋では、きびきびとカーテンを開ける男の子。元気いっぱいの笑顔とはつらつとした空気が室内を満たす。思わず笑みがこぼれた。まるでとびきり素敵な夢を見たように。
門の脇にあるレトロな木枠の古い窓に、暮らしの中にあるシンプルな美しさを見る。首を振りながら涼風を送る古い扇風機は、あなたたちだけの空間であるこの家の中で過ぎ行く時とともに、静かに味わいを増していく。宿に別れを告げる頃、裏庭へ行って身体いっぱいに陽射しを浴びた。鳥のさえずりにのってほのかな香りが運ばれてくる。芽吹くシナモンの小枝がそよ風に揺れていた。背伸びをして猫の爪痕残る褐色の幹に触れると、生活の痕跡を感じて思わず微笑みがこぼれる。そして心の中で再会を誓うのだ。にぎやかな街に戻った今も時々思い出す。太陽の下、あの秘密の隠れ家で青々とした葉を輝かせていたシナモンの木を。静かで温かな旅の1ページの中に…。