「今日は何を飲む?」――夏なら一杯の冷茶でクールダウン、冬なら温かいミルクティーでほっこり…亜熱帯気候に属する台湾では、果てなき独創性をプラスした茶文化が発展してきました。Dear b&bがお届けするドリンク特集第一章は、「お茶」から始めましょう。ドリンク王国台湾の過去から現在へとお連れします。素晴らしいお茶の香りと味わいを…まずは始めの一杯に全身全霊を込めて――「あぁ、毎日でも飲みたい!」
( Photo Credit: itsjamestsai、春水堂、melonyu816 )
泡沫紅茶店から誰もが手にするシェイクティーへ
「手揺茶(シェイクティー)」とは、シェーカーに紅茶などのお茶やシロップを加えてきめ細かく泡立てたドリンクのこと。その起源は、「泡沫紅茶店(シェイクティーを扱う喫茶店の総称)」の出現までさかのぼります。昔ながらの茶芸館で淹れ立てのお茶を味わう習慣やその味をちょっと変えて提供したのが始まりでした。手頃な価格帯もまた、「お茶する」ことを身近なものへと変えていったのです。三大発祥店と言われる台南の「雙全紅茶」、台中の「春水堂」や「小歇茶坊」は、いずれも1980~90年代、学生や会社員に人気のたまり場でした。
その後「快可立Quickly」や「休閒小站」、さらに支店数が多く、現在も名の知れた「清心福全」や「50嵐」、「茶之魔手」などのドリンクスタンドが急速に台頭し、台湾中にシェイクティー・ブームを巻き起こしました。ワンコインより安い50元以下の価格で500ccや700ccもの大容量の出来立てドリンクを楽しむことができるのです。放課後になると、シェイクティーを飲むことが学生の間でトレンドとなり、ドリンクスタンドは都市部に林立するばかりか、コンビニよりも店がひしめく「ドリンク通り」まで出現。「毎日水代わり」「一日最低三杯」などというつわものまで現れました。こうしてシェイクティーは飛躍的にその地位を確立し、台湾の暮らしに欠かせないものとなっていったのです。
( Photo Credit: tireboy_ky、清心福全、布萊恩紅茶、JIATE、ishihaye、京盛宇 )
甘さも温度もあなた次第!味もカップもありすぎて制覇しきれない!?
そしてよく知られる甘さや氷の量のカスタマイズは、「清心福全」が最初に始めました。コールド/ホットを選ぶのは当たり前、砂糖や氷も店のマニュアル量を「正常(100%)」として、「少(70%)」、「半(50%)」、「微(30%)」、「去(0%)」と加える量を自由に変えることができるのです。これは顧客サービスというだけでなく、台湾の台湾ドリンク店であるべき最大の特色なのです!全てのドリンクスタンドで甘さや氷の量は同じとは限りません。ですからマニアは、狙いを定めて自分好みの黄金比を探し出し、使い分けしているのです。
台湾人は目新しいもの、ひねりを加えたものが大好きです。そのため飲み物の味やパッケージも、より多彩になってきました。ドリンクは喉を潤すためだけのものではなく、手軽に持ち運べるスイーツでもあるのです。お茶の種類であったり、ミルクティーやジュース、氷の量の調整から、タピオカ・ナタデココ・シソなど伝統スイーツのトッピングを取り入れるに至るまで、新たな波が次々と沸き起こってきたのです。加えて台南の「布萊恩紅茶」は台湾産の茶葉、台中第二市場にある「老頼茶桟」は昔ながらの紅茶の味、といった具合に、各店こだわりのポイントに力を注いでいます。
カップのデザインもまた、透明カップに店のロゴを印刷したシンプルなものから、スタイリッシュなものへと進化を遂げています。紅茶で有名な「可不可KEBUKE」や台湾語の“呷茶”から命名された「JIATE」は、カップはもちろん美的センスを兼ね備えた店構えも相まって、インスタ映えスポットとして人気です。同じく洗練路線を突き進む「京盛宇」と「十間茶屋」は、もともと新タイプの台湾茶サロンでしたが、デザインボトル入りのテイクアウトも始めました。新型コンセプトストアである「COMEBUY」台北誠品生活松菸店では、カフェのようなバーカウンターを採用し、その場で豆を挽いたり、ドリップしたりするコーヒーの技をお茶に取り入れて、11時間もかけて水出しする冷茶まであります。このようにテイクアウト用ドリンクは、さらにランクアップしているのです。
( Photo Credit: 普龍供、missariesx2、一茶工房 )
喉越しに広がる甘い余韻 お茶マニア一押しのNo.1ドリンク
「お茶好き」「おいしい台湾茶を味わいたい」というあなたに、Dear b&bが自信を持っておすすめする「愛されドリンクスタンド三店」をご紹介します。まずは、かつて「烏鐵茶水鋪」の名で知られていた台北の「春山茶水鋪」です。台湾大学の学生からも支持が厚く、いつでも大行列。絶対にオーダーしたいのが「四季春」で、一口すすればお茶の香りが口の中に広がり、飲むほどに甘さが感じられます。続いては、南投・埔里にひっそりと店を構える「普龍供」です。「噗嚨共(プロンガン)」という台湾語で天然ボケを意味するちょっとおもしろい言葉の音と似ていますが、驚きの味!特に「普洱黒茶(プーアル黒茶)」や「紅烏龍」はお茶本来の香りがたまりません。最後は、茶の里・嘉義発祥の老舗「一茶工房」です。近頃若々しい新デザインに生まれ変わり、台北・永康街にも支店をオープンしました。テイクアウト用ドリンクだけでなく、かわいいお土産用の茶葉や、阿里山の茶畑で自家栽培された「穀雨烏龍」、「日月潭紅玉18号」のボトル入りもあります。いつまでたっても制覇しきれないほどたくさん、いくら飲んでも飽きることはない台湾のドリンクは、日々の暮らしの中で芳醇に香り続けます。