山の斜面に優しく積み重ねられた夢
山の中腹に建てられたグレーのモダンな建物――それが、民宿「大尾・山姆 維拉」だ。コンクリ ート打ちっぱなしの外壁が作る角ばった外見は、積み木が1つ1つ積み重ねられてできたようにも見 える。一部分だけ鮮やかな黄色に塗られた壁は、オーナーのDavidさんの気持ちを表しているとい う。抜けるような青空の下、毎日がきらめく休日だ。
IT企業でエンジニアとして働いていたDavidさんは、明るい大きな笑い声とは裏腹に、優しくて繊 細な心の持ち主だ。台東で兵役に就いていた彼は、山と海が織りなすこの美しい景色に魅了され 、10年前山の中腹に両親のために家を建てた。野菜を作ったり、園芸を楽しむ生活を送るようにな ったDavidさん。より多くの人にシンプルな生活の素晴らしさを知ってもらおうと2軒目の家を建て 、民宿にした。自身の英語のニックネームと中国語の名前、それから別荘タイプの宿泊施設を意味 する「ヴィラ」を掛け合わせて名前を付けた。

日の光のさまざまな表情を捕まえて
民宿「大尾・山姆 維拉」は、1回に1組の宿泊客しか受け入れない完全な貸し切りタイプだから、 思うままにくつろぐことができる。1階にはツインルームが2部屋。壁はシンプルなグレーを基調に 、1面だけ鮮やかな黄色で塗られているのがおしゃれだ。豪華な家具はないが、太平洋を切り取っ ている大きく開いた窓ガラスが贅沢さを感じさせる。窓から庭に出ることもでき、花が咲く小道を 散歩するのも気持ちが良い。部屋にある二人掛けソファに腰かけて、太陽の光に照らされた丘を眺 めるのもいいだろう。階段の後ろの大きな壁には様々な形の影が浮かんでいる。時間が経つごとに 形を変えていく光と影はとても幻想的だ。
2階のリビングダイニングとキッチンはやはりシンプルな雰囲気で統一されている。コンクリート の壁が木製の家具の温かみを引き立てており、テーブルにはDavidさん手作りのお菓子やフルーツ の蜜漬けが並べられている。ベランダに横たわるデッキチェアは寝そべって燦燦と注ぐ日の光を浴 びるのにもってこいだ。新緑に輝く山肌とどこまでも広がる太平洋の水平線を眺めていると、この まま時が止まればいいのにと心から願ってしまう。

シンプルな空間は全て美しい景色のために
眠りから目覚めると、Davidさん手作りの朝食がテーブルいっぱいに並べられている。サラダにピ ーナッツバター、パン、目玉焼きにローゼルティー、どれもDavidさんとお母さんが育てた食材を 使った品々だ。窓の外に広がる海を見ながら、栄養たっぷりの朝ごはんをいただこう。
大尾・山姆 維拉は開放的でいろんな表情を見せてくれる空間だ。日の光とその影が建物のあちこ ちに足跡を残していく。誘われるがままについて行くと、そこには緑深い山々と眩しい海が広がっ ている。この贅沢さは1日や2日じゃとても満喫しきれないだろう。